川西蘭の最新自転車小説「あねチャリ」を読了。


↑素直に読める青春小説
ヒロインは、不登校の女子高生・早坂凛。手首の骨折がきっかけで、小学生のころから続けてきたバレーボールに挫折、今はママチャリで近所のサイクリングロードを走るだけの日々を送っていた。ある日、ママチャリのパンクを修理してもらったことがきっかけで元競輪選手と知り合い、その影響で自転車競技に目覚めていく。女子には門戸の狭いピスト競技だが、凛は壁を乗り越えることができるのか!?
......というのが大まかなあらすじ。
いや~、これは「セカンドウィンド」以上にまっすぐな青春小説だわ~。ヒロインはいきなりピストに乗れちゃうほどの運動能力と空間掌握能力のもち主。ボスと呼ばれる元競輪選手、競輪学校入学を目指す少年、プロの競輪選手、最初は反対しながらも凛の望みを許すしかなかった両親などなど、とにかく悪人はひとりも出てこないし、凛はひたすら目標に向かって漕ぎつづけるのみ。ついでに色気も恋愛もナシ。なんともすがすがしくて、潔い。
「自転車は苦しさを喜びに変える、不思議な装置だ。苦しければ苦しいほど、喜びは大きくなる。走り終えた喜びもある。達成と解放の喜びだ。けれど、それだけではない。苦しみが喜びになる。苦しむこと自体が喜びになるのだ」(P.124)
ひたすらストイックに、凛はペダルをまわす。女は競輪選手になれないとわかっていながらも、走らずにはいられない。そんな彼女がめざすものは、世界......!
趣味で自転車に乗り始めた場合、「ツール・ド・フランス」などの海外ロードレースは見るかもしれないけれど、トラックレースや競輪を見たいという人は少数派......というか、ほとんどいないのではないだろうか。私を含め、そんな人にとっては、競輪やトラックレースについての理解を深めることもできる。主人公を女の子にしたからこそ、競輪という世界を初心者にもわかりやすく描くことができたのではないだろうかとも思う。あとがきによれば、「小説に描いた競輪は創作」だそうだけど。
一気に読めて、読後は明るい気持ちになれる爽快な小説。気持ちがどんよりしているとき、元気になりたいときにおススメ。人によっては、読んだ後にローラー台をまわしたくなるかも!?
たいへん面白い小説ではあったけれど、「セカンドウィンド」の3巻はいつなんでしょう。早く書いてください~!
◆
ところで、この「あねチャリ」、高千穂遙の「ヒルクライマー」と同じ版型のソフトカバー本なのだ。出版社も同じだし。そう思って「あとがき」を見直すと、両作品とも担当編集者が同じ「澤田芳明」。もしかして、「自転車小説叢書」でもつくるつもりなんだろーか。だとしたら、かな~り楽しみなんですが......。
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「あねチャリ」








小学館、自転車叢書を狙っているような気がします。(^_^;
小学館も『ヒルクライマー』も売れ行きが好調のようですし、昨今の自転車ブームで気を良くしているのでしょう。個人的には『ヒルクライマー』の続編を期待しています。
脈絡もなく新刊情報ですが(^_^;、年明けの来月は栗本薫さんの長編SF『レダ』が復刊されます。内容はご存知だと思いますが、未来社会を舞台にした少年の成長物語です。
さらに『夏への扉』(福島正実訳)が新装版で発売されるそうです。
H-Wac(わっく)さん、コメントありがとうございます。
「レダ」も復刊ですか。出版業界は本当に苦しいですから、あの手この手を考えないといけませんね。
競輪選手を目指す少女って凄い燃える話ですね。
これは読んでみたいです。王道小説だと思います。
nekki5149さん、コメントありがとうございます。
今のところ、女子は競輪選手にはなりようがないので、世界選手権をめざすわけですが……。本当に爽快感のある小説だと思います。おススメですよ~!
この不景気も影響しているのかもしれませんが、出版業界も苦しいようですね。今まで日本SFに手を出さなかった東京創元社が新井素子さんや菅浩江さんの作品、それに銀英伝を出版していますし、早川書房も核となっているSF・ファンタジー・ミステリー以外の他分野の作品にも力を入れているような気がします。
おぢさんには大変失礼なことながら、『じてんしゃ日記』の企画が早川書房で通ったことに内心驚きました。
また近年色々な出版社が力を入れている人気ブログ内のコミック(うちの3姉妹とかとなりの801ちゃん等々)も早川書房では『今日の早川さん』というコミックを刊行していますし。(このコミックを読んで書いてある事柄がことごとく自分に当てはまるので、自分の本質は『本おたく』なんだと再認識しました(^_^; )
ちなみに『今日の早川さん』3巻とドラマCDが春に刊行予定だそうです。
H-Wac(わっく) さん、コメントありがとうございます。
私自身は当事者ではないので、各出版社の事情についてはよくわかりません。