高千穂遙さんの最新小説「グランプリ」を読了。
表紙を見れば一目瞭然ですが、これは「競輪小説」です。タイトルの「グランプリ」は、毎年12月30日に開催される「KEIRINグランプリ」のこと。「なーんだ、競輪か。興味ないから」と思ったアナタ、ちょっと待って~! 競輪に興味がなくても、競技を知らなくても、十分に楽しめます。というか、読みごたえたっぷり。
主人公は......いません。全部で七章ある中で、最初の六章はそれぞれ主人公の違う短編小説として読むことができます。彼らの共通点は、年末の「KEIRINグランプリ」への出場をめざす競輪選手ということだけ。グランプリに出場できるのは、トップ中のトップの選手だけなので、出場するだけでも大変なことなのです。
描かれるのは、もしかしたらモデルがいらっしゃるのかな?というような選手もいれば、そうでない人もいるのかも。年代も、20代もいれば40代のベテランもいて、競輪選手となった理由も皆それぞれ違います。オムニバス小説のように読み進み、最後の「グランプリ」で一気に......という構成は、それだけで競輪のレースのよう。
レース映像で見るとどことなく無機質に見える選手たちが、物語の中では実にイキイキと描かれています。選手ひとりひとりに個性とドラマと野望と挫折があることはあたりまえなのに、今までそんなことは考えもしませんでした。
最後の第七章が「KEIRINグランプリ」。それまでの章には、それぞれグランプリの出場者を決める大会名が付けられています。グランプリに出場できるのは9人。なのに、六章分では6人しか決まらないのでは!?とも思ってしまうわけですが、そのあたりは読んでいてのお楽しみ、でもあります。
それにしても、本当にストイックな小説。グランプリに出場するためには余計な贅肉はいっさい付けられないのですが、小説自体がまさにそんな感じ。「体脂肪率ひとケタ」小説とでも申しましょうか(まさに高千穂さんご本人のようです)。
ありがちな恋愛や安っぽい友情や同情などは一切不要で、ひたすらクライマックスに向かって突き進むスタイルがすがすがしく感じられます。そういえば、「クラッシャージョウ」や「ダーティペア」以外の高千穂さんの小説って、こういう「筋肉質」なものだったんだよなあなんて、改めて思い返しました。
だから、読む側も居住まいを正して読まなくてはなりません。登場人物がものすごく多く、あちこちの章に入れ替わり立ち代わり登場するので、流し読みしただけでは混乱するかもしれないし、本当に楽しめないんじゃないかな。
実際にグランプリに出場しない脇役たちも実に個性的なので、そのへんを把握するには最低二度は読んだほうがいいと思います。出身地と年齢の記載付きの「キャラクター一覧」があったらいいのに~と思ったこともありましたが、そんなに軟弱ではイカンのです、たぶん。
「競輪」というスポーツにふさわしい、骨太の小説。ハードカバーがピッタリでした。
◆
ひとつ前に発表された自転車小説「ヒルクライマー」が、小学館文庫で発売されています。未読の方はぜひ文庫版で~!
応募者殺到で、出場は抽選状態になっている「まえばし赤城山ヒルクライム」は、この小説で描かれている「架空の」赤城山ヒルクライムレースが元となって、今年から誕生したものです。このレースに出ようと考えておられる方は、予習として読むのもおススメですよ~!
それにしても、表紙が違うとずいぶん印象が変わるものだな~(単行本時のレビューはこちらに)。
*追記*
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